昨今はさかんにコストダウンが叫ばれますが、ただ安い部品を購入するだけでは限界があります。すなわち、機械・装置をコストダウンするためには、機械部品そのもの機能・性能はそのままにいかに安く作るか(=VA・VE)、ということを設計段階から考慮しておく必要があるので。その機械部品のVA・VEの検討のために、押さえておくべき基本的なポイントがあります。それらを下記にてご紹介いたします。
1.使用される刃物の事を考慮して、寸法・形状などを決定する
穴あけ加工に用いるドリルなどの刃物は、その径に対してあまりにも深い穴加工を行うと刃物が折れるリスクが上昇します。従ってこれを回避するためにザグリを入れるなど設計段階で対応しておけば、コストダウンに繋がります。
2.採用した精度・公差が、機能上本当に必要かどうか見直する
例えば極端に厳しい精度・公差が設定された場合は、加工する機械や環境も限定されてしまう上、時間もかかります。以前から使われている公差をそのまま使用せず、設計の都度、必要な精度・公差を検討することが必要です。
3.外径(外側)加工よりも、内径(内側)加工の寸法・形状を見直す
旋削加工および切削加工の基本原則は、外径よりも内径の加工の方が難易度が高まる、ということです。例えばポケット加工においてピン角にしてしまうと加工コストが上昇するので、なるべく大きなR形状にします。
4.部品と部品同士の取り合いを考慮した形状で設計する
スリーブとシャフトのように、組み合せて使用する部品を設計する際には、どの部分で干渉するのか、そしてその干渉を回避するにはどのように加工するのが最適なのかを考慮します。さらに、はめあい公差が必要かどうかの検討も必要です。
5.市販の規格品を活用できないか検討する
ロット数量、あるいは求められる精度にもよりますが、規格品を活用すれば加工時間が殆ど必要なくなるので、大幅にコストが削減できる可能性があります。
6.削り出すだけでなく、溶接によって製作できないか検討する
旋盤・マシニングセンタなどによる加工に詳しくなればなるほど、必要な機械部品の形状を削り出しによって製作するよう設計してしまいがちになりますが、大きなワークになれば材料費も加工費もムダになるケースがあります。子部品同士を溶接して一つの機械加工品にできればコストが低減するケースが多くあるので、設計する上ではこうした視点も必須となります。
上記のようなポイントを押さえながら設計を行うことができれば、機械部品の製造工程における作業時間が短縮されるので、ひとつひとつの機械部品のコストを低減させることができます。この機械部品単品でのコストダウンに加え、組立段階における作業性が向上するような設計を行えば、トータルとして機械・装置のコストを抑えることができます。
それでは、ここからは機械部品のコストダウンに繋がる設計のポイントの具体例を見ていくことにしましょう。